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ディラン・ロット先生のお話会
~米国シカゴ大学小児病院でのタッチケアの実践報告


ディラン・ロット先生のお話会 ~米国シカゴ大学小児病院でのタッチケアの実践報告

ゲスト:山口 創(桜美林大学リベラルアーツ学群教授)

主催:NPO法人タッチケア支援センター

~やさしくふれると、世界はかわる~

先日、文化・心・身体・脳の関係をボディワークの実践を通じた独自の視点で探求する人類学者であるとともに、米国シカゴ大学付属コマー小児病院のマッサージ・セラピストとして活動をしておられる米国の小児病院のマッサージ・セラピスト ディラン・T・ロット先生のお話を拝聴させていただきました。


◆第一部:ディラン・ロット先生のお話 

  • 米国の病院でのマッサージ・セラピーについて

  • シカゴ大学医学部、コマー小児病院のプログラム、新生児への対応

  • 母親や介護者のサポートについて

  • 他の専門分野との連携などの、今後の方向性と課題。

◆第二部:ロット先生と山口創先生との対談&質疑応答


米国での医療環境下でのマッサージ・セラピーの実践においてディラン・ロット先生のお話の中で、個人的に、特に、NICU(新生児集中治療管理室)、PICU(小児集中治療室)での米国の医療現場でのタッチケアの現状、さまざまな生命現象に関わっているエピジェネティクス(DNA上の塩基配列に変化は無くても、細胞の種類や環境に応じて後天的に遺伝子の使われ方が変化する仕組み)の研究などからも、新生児期からのタッチケア(マッサージ・セラピー)の大切さを改めて感じました。


ディラン・ロット先生は、NICU、PICU、オンコロジー、抗がん治療等のユニットで、生命にかかわる病気や慢性的な症状を抱える子どもたちが、痛み、不安、治療や薬の副作用、混乱、自己コントロール感の喪失、孤立感などに対処できるよう統合医と補間医療を提供、新生児からハイティーンまであらゆる年代の子どもたちにマッサージ療法を提供し、看護にかかわる家族や医療従事者のストレスや悲嘆ケアのサポートも行ってこられたそうです。


私がベビーマッサージを学んだティナ・アレン先生も、医療的なケアが必要な子ども達とその家族が抱える肉体的・精神的悩みに関する知見が深く、実際にそうした子ども達にタッチセラピーを施されてきたことのある先生だったので、ディラン・ロット先生のお話と重なるところもありました


米国の医療現場でのタッチケアの現状について、ケース事例をまじえたディラン・ロット先生のお話の中で、NICUで医療的な介入を必要とする新生児に施すタッチケアの事例から、どのような配慮が必要で、どのようなタッチケアが適切なのか、また、そういったことがどのような変化をもたらすのかというお話がとても参考になりました。


脳は、周産期にいかに発達していくかのお話があり、早産児は、神経的にも未発達のところもあり、本来、胎内では起きないような刺激を含めた外的環境の刺激からの情報による受けてしまう影響の緩衝となる神経保護的なケアを、発達段階に応じてしていくことが大切になってくるということについては、とても納得ができました。

医療の処置とは異なったポジティブなタッチに触れる機会を増やし、ネガティブな刺激をバランスの良い方向へとシフトしていけるように、赤ちゃんのサインを受け取りながら働きかけていく適切なタッチ。


タッチケアを施す人のPresence(在り方)は、やはりとても大切です。

ディラン・ロット先生はマインドフルネスによるケアを提供していくことをお話されました。)


身体的なふれあい、養育的な接触が少なかった赤ちゃんは、免疫系と代謝系の遺伝子活性化パターンに有意な差が見られり、適切なインプットがないままだと大人になってからも神経系の問題を抱えたままになります。

話しかけられ、養育的な身体的接触を経験した赤ちゃんは、社会認識と感情の制御に重要な役割を果たすホルモンであるオキシトシン受容体の数がより多くなるというような研究結果もあり、どのようなインプットを環境から得るかによって変わってくることもわかっています。


医療環境下でのタッチケア(マッサージセラピー)というのは、導入されているところの方がまだまだ少ないのが現状のようですが、科学的な根拠に基づいてお伝えできることも年々増えてきていて、親が知っていることで、我が子に触れるのが怖いというところから、我が子に触れるときのタッチが、ケアも含めた愛のこもったタッチとなって、母胎に包まれているような安心感の中で我が子が育っていく、その積み重ねが、様々な面で、変化をもたらしながら成長していってくれることへと繫がっていくということに希望をもっていただけるように、Peace blossomsでも、必要な方に、適切なタッチケアをこれからもお伝えしていきたいと思っています。



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